ボトックスとは、筋肉の過剰な緊張を和らげる注射治療です。美容分野では「しわ改善」で知られていますが、歯科では 食いしばりや歯ぎしりの軽減 に用いられています。
食いしばりへの効果
①顎の筋肉(咬筋)の働きを抑えることで、噛みしめる力を弱めます。
②歯のすり減り・欠け・ヒビを防ぎます。
③顎関節への負担を軽減し、痛みや疲労感の改善につながります。
④筋肉の張りが落ち着くことで「エラの張り」も目立ちにくくなる場合があります。
治療の流れ

ボトックスは、短時間・低侵襲で食いしばりの負荷を減らし、歯と顎を守るサポート治療です。
「顎のだるさや歯の摩耗が気になる」「マウスピースだけでは改善が乏しい」方は、適応の有無だけでも一度ご相談ください。
当院で取り扱っているボトックス製剤として以下があり、カウンセリングを通じて決定します。
①ボトックスビスタ
は、アラガン社が製造しているボツリヌス毒素製剤で、世界的に広く使用されています。主に美容目的で使用されることが多いですが、医療分野でも筋肉の過活動による治療(例えば眼瞼痙攣や斜視)にも使われています。ボトックスビスタは、高い純度と安定性を誇り、その効果の持続期間も比較的長いとされています。特に美容クリニックでは、シワの改善を目的に使用されることが多く、患者からの信頼も厚い薬剤です。
②ボツラックス
韓国製のボツリヌス毒素製剤で、ボトックスビスタと同じく筋肉の過剰な収縮を抑える作用を持ちます。ボツラックスの特徴は、他のボツリヌス毒素製剤に比べて比較的価格が安価である点です。コストパフォーマンスを重視するクリニックや患者にとって、非常に魅力的な選択肢となります。ボツラックスもシワ治療や顔面の筋肉の治療に使用されるほか、体に注射して過剰発汗の治療に使用されることもあります。ボツラックスはボトックスビスタに比べて、薬剤の分子構造や純度が若干異なるため、個人差が出やすいこともありますが、治療効果は同様に高いとされています。
症状(顎のだるさ・痛み、歯の摩耗、頭痛など)、発症時期、既往歴、服薬(抗凝固薬・抗生物質など)、アレルギー歴、過去のボトックス歴、妊娠・授乳の有無を確認。
視診・触診:
咬筋の張り・圧痛、開口量、咬合状態、歯の摩耗・欠け、頬粘膜や舌縁の圧痕の有無をチェック。必要に応じて記録写真を撮影。
適応と禁忌の判定:
禁忌例:
妊娠・授乳中、重症筋無力症など神経筋疾患、過去にボツリヌス製剤で重い副反応があった方 等。
併用注意:
一部の抗生物質(アミノグリコシド系など)や筋弛緩薬の内服中。
治療設計:
期待できる効果の範囲、持続期間、リスク(内出血・違和感・一時的な噛みにくさ等)、費用、ナイトガードやTCH是正などの併用プランを説明し、同意書を取得。
前日〜当日の注意:
施術前日は過度の飲酒を避ける。当日は濃いメイクや強いマッサージを控えるなど。
軽く食いしばっていただき、咬筋の**筋腹(前・中央・後部)**を確認・印付け。
施術:
極細針で少量を分割投与(片側数か所)。所要時間は5〜10分程度。
痛み対策:
アイスでの冷却や局所麻酔クリーム等を必要に応じて使用。
想定される副反応:
数日間の軽い痛み・圧痛、内出血、違和感、まれに咀嚼力の低下感。通常は数日〜1週間で軽快。
施術後の注意:
当日は強い揉みほぐし・激しい運動・サウナ・大量飲酒を避ける。
うつ伏せ就寝や頬の圧迫をできるだけ避ける。
洗顔・入浴は当日から可(長湯は控えめに)。メイク直しも可。
ナイトガードの使用は指示どおりに再開(通常は当日〜翌日より可)。
2〜3日で「噛む力が少し抜けた」感覚、1〜2週間で効果が安定。
感じやすい変化:
朝の顎のだるさ・こわばりの軽減、歯のきしみ感の減少、頭・こめかみ周囲の筋緊張の緩和。
外見上のエラ張りは3〜8週間ほどで緩やかに変化することがあります(個人差あり)。
通院:
2週間前後に経過チェックを行い、必要なら微調整(追注の可否は診断による)。
日常のポイント:
硬い食べ物(スルメ・噛み応えの強い肉等)は施術直後は控えめに。日中のTCH(歯の接触癖)是正を並行して行うと効果の体感が高まりやすいです。
初回は3〜4か月が目安、複数回の継続で4〜6か月に安定することも(個人差あり)。
再施術の目安:
噛む力が戻り始めたタイミングで3〜4か月ごとに再注射を検討。短すぎる間隔の連続投与は**耐性(中和抗体)**の観点から避けます。
長期的メリット:
歯や補綴物(詰め物・被せ物・インプラント)への負荷軽減、顎関節の保護。ナイトガードや生活指導との併用で総合的な改善を目指します。
費用と区分:
多くのケースで自費診療。費用・頻度・併用療法は個々の状態に合わせ提案します。